食道がん
食道より発生した悪性腫瘍のこと。
2018年の全国がん登録罹患データでは,わが国の胃がん罹患数は大腸がんに次いで2位,胃がんの死亡数は肺がん,大腸がんに次いで3位である.胃がんの発生要因としては,塩分過剰摂取や喫煙等の他に,H. pyloriの持続感染が関与している.
分類
Ⅱ.分類
① 組織型による分類
日本においては扁平上皮癌が90%と最も多く,次いで腺癌が5%となっている.胃食道逆流症(GERD)を背景とした下部食道腺癌の増加が危惧されている.
② 発生部位による分類
食道は口側から頸部,胸部上部,胸部中部,胸部下部,腹部と区分され,癌ができた部位によって頸部食道痛,胸部上部食道癌など分類される。
③ 癌の深達度による分類
原発巣の深達度が粘膜内にとどまるものを早期食道がんとよぶ。また粘膜下層までにとどまる食道癌を表在癌とよぶ,粘膜下層およびそれより深いものを進行食道癌とよぶ,いずれもリンパ節転移の有無は問わない.
④ 形態学的(肉眼型による)分類
0型:表在型(亜分類;0-I型:表在隆起型、0-IIa型:表面隆起型,0-Ⅱb型:表面平坦型,0-Ⅱc型,表面陥凹型,0-Ⅲ 型:表在陥凹型),
1型:隆起型,2型:潰蛎限局型,3型:潰瘍浸潤型,4型:びまん浸年間型,5型:分類不能型.
⑤ 進行度による分類(表1)
日本食道学会の食道癌取扱い規約とTNM分類によって、0~ Ⅳ期までの進行度に分類されている 両者の主な違いはリンパ節転移に関する内容で,食道癌取扱い規約が転移領域で規定されているのに対し,TNM分類では転移個数で規定されている。
病態
60歳代に発生のピークがある。男女比は7:1で男性に多い。さまざまな遺伝的要因と環境要因によって発生すると考えられている.扁平上皮癌と関連がある環境因子には,飲酒,喫煙があげられる。またアルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを分解するアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)の遺伝子多型が,発癌のリスクと関連している。このほか果物や野菜を摂取しないことによるビタミン欠乏も危険因子とされる。 腺癌と関連がある環境因子には,生活習慣の欧米化による肥満とそれに伴うGERD,下部食道のバレット上皮,喫煙があげられる。
症候
早期食道癌はほぼ無症状であり,検診やその他の症状に対する内視鏡検査によってたまたま発見されることが多い.食道癌の進行により原発巣が大きくなると,食事のつかえ感, しみる感じ,痛みが, さらに増大すると食事や唾液の逆流がみられるようになる.また原発巣やリンパ節転移が反回神経に浸潤するとH夏声(声がれ)がみられる.
診断
食道内視鏡検査,食道造影検査により,大きさ,部位,深達度の診断が行われる狭帯域光観察(narrow bandimattng:NBI)と拡大内視鏡を組み合わせ,食道癌の粘膜表面の血管や微細構造,無血管領域の大きさを観察することにより,食道癌の壁深達度を予測することができる。またルゴールを用いて食道粘膜を染色すると,食道癌がルゴールに染まらないため,癌の範囲を診断するのに有用である.
治療
進行度0の内視鏡治療に関しては,深達度が浅いMl~M2が絶対的適応となる。MM癌(M3)はリンパ節転移が約10%に認められ,内視鏡治療の相対的適応となる。進行度Ⅱ,Ⅲ に対する術前治療は, 日本では化学療法が,欧米では化学放射線療法が行われることが多い.標準的な根治手術では食道と所属リンパ節を切除する.手術法は従来の開胸手術に代わって胸腔鏡手術が増加してきている。