直腸がん

Rectal cancer 直腸がん

直腸がん

直腸がん

直腸がんは大腸がんのうち42%を占め,組織型は腺がんが90%以上である。直腸は骨盤内臓器であり,周囲の泌尿生殖器への浸潤をきたすことがある。手術に際しては,手術後の直腸膀胱機能や生殖機能に障害をきたすこともあり,病変の切除に伴い人工肛門造設が必要となることもある。

直腸がんの症状

初期には無症状のことが多いが,進行すると下血や血便,便通異常などが出現し,痛みを訴えることもある。

直腸がんの内視鏡診断

直腸がんの内視鏡診断

大腸内視鏡検査は大腸がんの診断に最も重要な検査であり、腫瘍の局在、大きさ、肉眼型、深達度などを観察すると ともに生検を行い,確定診断を行う。特に下部直腸がんでは歯状線からの距離が,術式決定に重要である。早期がんでは内視鏡や色素内視鏡,narrow band imaging(NBI)やBlue Laser Imaging(BLI)内視鏡などで腫瘍の表面構造を観察することにより腺腫と腺がんを鑑別したり、粘膜下層への浸潤の有無を判定したりすることができるようになった。

直腸治療

直腸治療

リンパ節転移のない早期がんやその頻度がきわめて低い直腸癌に対しは腺腫と同様にEMRやESDな どの内視鏡治療や、経肛門的に直視下あるいは内視鏡下に局所切除を行う。リンパ節転移の可能性がある腫瘍に対しては系統的リンパ節郭清を伴う手術治療を行う。根治切除可能な遠隔転移を有する場合には同時または二期的に切除を行う。根治切除不可能な場合には全身化学療法を行う。

直腸がんの新しい手術アプローチ法

直腸癌の手術は,骨盤内の狭い空間で行うめ、近年では腹腔鏡下に行われることが多 くなつ てきた。腹腔鏡下の手術においても, より深部では視野確保が困難なことや直線的な鉗子では繊細な手術操作が難しいこともある。これらの点を補うために,ロ ボツト支援手術や経肛門的なアプローチによる内視銃手術が行われる。ロボット支援手術は、高解像度の3Dカメラに手観察しつつ、多関節機能による広い可動域の操作鉗子を用いて手術操作を行うものであり,手振れ防止機能(filtering機能)やscaling機能により微細かつ正確な操作が可能と言われている。骨盤深部の操作も可能であり、施行されることが多くなっている。

肛門管がん

恥骨直腸筋付着部上縁より肛門縁までに発生した癌をいう。肛門管癌の上大は直腸粘膜部,移行帯上皮部,肛門上皮部からなり, また肛門陰寓に帯上皮部,肛門上皮部からなり, また肛門陰寓には肛門腺が開日しているので,肛門管癌は多彩な組織像を示す。主な組織型としては,腺癌,痛平上皮癌,腺痛平上皮癌がある.70~80%は腺癌 であり,腺癌のなかには,長期の痔凄の既往に伴う痔ろう癌も含まれる。肛門管癌の主な症状は肛門痛,出血,排便障害 などで痔疾患の症状に似ている。 治療は腺癌と扁平上皮癌で異なり,腺癌に対しては,通常の直腸癌と同様の治療が行われる.したがつて手術は,腹会陰式直腸切断術が行われる ことが多い。これに対して、扁平上皮癌は放射線に対する感受性が高く化学放射線療法が第一選択となる。

直腸肛門部に発生するその他の悪性腫瘍

i. 悪性黒色腫

直腸肛門移行部に存在するメラノサイトから発生すると考えられている。肛門管悪性腫瘍の1~ 3%を 占める。メラニンを産生し黒色~灰自色の 隆起性腫瘤を形成するが,低色素性のものも存在する。高悪性度の腫瘍で,血行性, リンパ行性に 遠隔転移をきたし予後は不良である。

ii. 神経内分泌腫瘍

内分泌細胞に分化した腫瘍細胞 ら構成される 癌である。組織学的に神経内分泌パターンを示す高分化な腫瘍をneuroendocrine tumor (NET)とし,G1, G2, G3に分類している。 組織学的に低分化なものはneuroendocrine carcinoma(NEC)とし,大細胞型、小細胞型に分類されている。NETはいわゆるカルチノイドと呼ばれていたものに相当し,粘膜下腫瘍様の形態をとる。表面平滑な半球状の粘膜下腫瘍で, 黄色味を帯びるのが特徴である。大腸では下部直腸と虫垂に好発する。1cm未満のNETに対しては、内視鏡的切除や経肛門的切除が行われる。1 cm以上の腫瘍や 1cm未満でも固有筋層漫潤, 脈管侵襲などリンパ節転移の可能性がある場合 は,リンパ節郭清を伴う直腸切除が推奨される.

iii. 消化管間質腫瘍 gastrointestinal stromal tumor (GIST)

消化管筋層の細胞(Cajalの 介在細胞)由来の腫瘍で、粘膜下腫瘍様の形態をとる。治療は外科的切除であるが, リン パ節転移は稀であり,リンパ節郭清は不要である.

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